線維筋痛症による障害年金と認定基準

線維筋痛症は、藤井法務事務所 障害年金研究室ではよくご相談や手続きのご依頼をお受けする事例です。

治療に関する専門医も少なく、病名が特定されずにご苦労される患者さんが多いと聞きます。

線維筋痛症に対する障害年金の請求方法は、ある程度はっきりしましたが、病歴の長いケースや多くの医療機関を受診していることもあるため、専門家に任せたほうがいい案件が多くみられます。

以下、藤井法務事務所 障害年金研究室で申請した事例をご紹介します。




もくじ

線維筋痛症による障害年金申請事例


線維筋痛症① 障害年金申請事例


手続を代行した結果・概要
  • 疾患名:線維筋痛症
  • 性別・年齢:男性44歳
  • 住所地:北海道 札幌市
  • 障害の状態:頭痛、顔面のしびれ、左肩痛、手のしびれ痛、下腿痛
  • 決定等級:障害厚生年金3級

発症から障害年金申請までの経緯
8年前より頭痛と首から肩・背中・腰にビリビリとした痛みが出現した
3年程度かけて頭痛が強くなり、顔のしびれと痛みのほか身体全体に痛みが広がりしばしば激痛となったことから病院を受診した。
診察の結果、線維筋痛症と診断され、以後継続して受診している。

薬物治療を受けているが、激痛の発症が多くなり、常に全身疼痛に悩まされている。

障害年金については、ご本人様が請求を考えられるようになり、弊事務所にご相談いただき手続きを代行することとなりました。


請求手続き・学んだこと

受診した医療機関は初心から現在まで同じ病院でした。

ステージはⅢと比較的重い方ですが、デスクワークで就労しています。

障害厚生年金3級と認定されました。


その他の線維筋痛症障害年金申請事例(受給事例)

線維筋痛症 障害年金申請事例2-障害認定日請求、2級

線維筋痛症 障害年金申請事例3-事後重症、2級

線維筋痛症 障害年金申請事例4-事後重症、2級


線維筋痛症の認定基準は?

線維筋痛症の請求では、「肢体の診断書」を使用し医師に診断書を作成していただきます。あわせて圧痛点についての書面も提出することになります。

したがって、認定基準としては「肢体の障害」を押さえておきたいと思います。
「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 平成29年9月1日改正」を参考に認定基準のポイントを確認します。

肢体の障害
令別表障害の程度障害の状態
国年令別表1級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
厚年令別表第13級身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害の認定

肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳血管障害、脊髄損傷等の脊髄の器質障害、進行性筋ジストロフィー等)の場合には、「上肢の障害」、「下肢の障害」及び「体幹・脊柱の機能の障害」に示したそれぞれの認定基準と認定要領によらず、「肢体の機能の障害」として認定するとされています。


肢体の障害の認定方法

肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定するとされています。なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定するとされています。


各等級に相当すると認められるものの一部例示


障害の程度障害の状態
1級1 一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの
2 四肢の機能に相当程度の障害を残すもの
2級1 一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの
2 四肢に機能障害を残すもの
3級一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの
(注)肢体の機能の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領によって認定することとされています。

なお、肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であって、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し、認定することとされています。


日常生活における動作と身体機能との関連

日常生活における動作と身体機能との関連は、厳密に区別することができませんが、おおむね次のとおりです。

ア 手指の機能

(ア)つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)

(イ)握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)

(ウ)タオルを絞る(水をきれる程度)

(エ)ひもを結ぶ

イ 上肢の機能

(ア)さじで食事をする

(イ)顔を洗う(顔に手のひらをつける)

(ウ)用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)

(エ)用便の処置をする(尻のところに手をやる)

(オ)上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)

(カ)上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)

ウ 下肢の機能

(ア)片足で立つ

(イ)歩く(屋内)

(ウ)歩く(屋外)

(エ)立ち上がる

(オ)階段を上る

(カ)階段を下りる

なお、手指の機能と上肢の機能とは、切り離して評価することなく、手指の機能は、上肢の機能の一部として取り扱われます。


身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係

身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係を参考として示すと、次のとおりです。

ア 「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいいます。

イ 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいいます。

ウ 「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいいます。