脳梗塞など脳疾患の障害年金と認定基準

脳梗塞や脳出血などの脳血管障害の後遺症である肢体の麻痺や言語障害や認知障害は、障害年金の対象です。
また、脳腫瘍の術後後遺症についても障害年金の対象となります。

藤井法務事務所でお受けするご相談についてみると、後遺症の種類としては肢体麻痺が多く、いわゆる「肢体の障害」として障害年金を請求する事例が中心ですが、中には、めまいが後遺症として残り「平衡機能の障害」として障害年金を請求する事例や「高次脳機能障害」として請求する事例もあります。


もくじ

脳疾患による片麻痺などの認定基準は?

「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 平成29年9月1日改正」を参考に認定基準のポイントを確認します。

肢体の障害
令別表障害の程度障害の状態
国年令別表1級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
厚年令別表第13級身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害の認定

肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳血管障害、脊髄損傷等の脊髄の器質障害、進行性筋ジストロフィー等)の場合には、「上肢の障害」、「下肢の障害」及び「体幹・脊柱の機能の障害」に示したそれぞれの認定基準と認定要領によらず、「肢体の機能の障害」として認定するとされています。


肢体の障害の認定方法

肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定するとされています。なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定するとされています。



各等級に相当すると認められるものの一部例示

障害の程度障害の状態
1級1 一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの
2 四肢の機能に相当程度の障害を残すもの
2級1 一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの
2 四肢に機能障害を残すもの
3級一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの
(注)肢体の機能の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領によって認定することとされています。

なお、肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であって、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し、認定することとされています。


日常生活における動作と身体機能との関連

日常生活における動作と身体機能との関連は、厳密に区別することができませんが、おおむね次のとおりです。

ア 手指の機能

(ア)つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)

(イ)握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)

(ウ)タオルを絞る(水をきれる程度)

(エ)ひもを結ぶ

イ 上肢の機能

(ア)さじで食事をする

(イ)顔を洗う(顔に手のひらをつける)

(ウ)用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)

(エ)用便の処置をする(尻のところに手をやる)

(オ)上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)

(カ)上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)

ウ 下肢の機能

(ア)片足で立つ

(イ)歩く(屋内)

(ウ)歩く(屋外)

(エ)立ち上がる

(オ)階段を上る

(カ)階段を下りる

なお、手指の機能と上肢の機能とは、切り離して評価することなく、手指の機能は、上肢の機能の一部として取り扱われます。


身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係

身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係を参考として示すと、次のとおりです。

ア 「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいいます。

イ 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいいます。

ウ 「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいいます。


脳血管障害(肢体障害) 障害年金申請成功事例

藤井法務事務所の申請事例をご紹介します。ここでは肢体の障害によるものを記載します。

脳出血 障害年金申請事例1―障害厚生年金2級、左半身麻痺


手続を代行した結果・概要

  • 疾患名:脳出血
  • 性別・年齢:男性41歳
  • 住所地:北海道
  • 障害の状態:左半身完全片麻痺及び感覚脱失
  • 決定等級:障害厚生年金2級
発症から障害年金申請までの経緯
会社で書類作成をしていたところ、急に具合が悪くなり、自宅に帰った。自宅で休んでも回復しないため救急車を要請した。

左半身が麻痺した状態で病院へ搬送されたというが記憶がない。

急性期の治療とリハビリを合わせて入院療養を約3ヶ月受けた。

請求人様から障害年金の申請についてご相談を受け、手続きの代行をお引き受けした。


請求手続き・学んだこと
初診から現在まで同じ病院で治療を受けられています。

したがいまして、医証は診断書一本での請求となりました。

病歴就労状況申立書を作成し、その他の書類も準備して提出したところ、障害厚生年金2級と決定されました。


脳梗塞 障害年金申請事例1―障害厚生年金2級、右半身麻痺


手続を代行した結果・概要

  • 疾患名:脳梗塞
  • 性別・年齢:男性41歳
  • 住所地:北海道
  • 障害の状態:右片麻痺
  • 決定等級:障害厚生年金2級

発症から障害年金申請までの経緯
勤務中に胸が苦しく血の気が引く感じなどの症状があらわれ、救急車で病院に搬送された。脳梗塞との診断で緊急手術となった。その後、右麻痺、言語障害、文字認識障害などが残りリハビリを実施することとなった。

急性期からリハビリ期までの9か月を3か所の病院で過ごしたが、その間に脳梗塞の原因となった原発性全身性毛細血管漏出症による発作の治療が加わりさらに他の病院へ転院入院となり、脳梗塞発症から10カ月を経過して退院となった。

障害年金の申請については、請求人様からご相談を受け、手続きの代行をお引き受けした。


請求手続き・学んだこと
初診から現在まで4か所の病院で治療を受けられています。

初診の病院で受診状況等証明書、現在の病院で診断書を作成していただきました。

病歴就労状況申立書を作成し、その他の書類も準備して提出したところ、障害厚生年金2級と決定されました。




脳疾患(肢体の障害)の申請事例

脳梗塞 障害年金申請事例2ー障害認定日決定、3級

脳腫瘍 障害年金申請事例1-事後重症、2級




脳疾患(肢体の障害以外)の申請事例

脳疾患後遺症等の平衡機能障害と障害年金と認定基準

脳梗塞 障害年金申請事例3ー事後重症、3級



脳血管障害の障害年金申請のポイント

初診日から6カ月を経過すると申請できる場合がある。

原則として、障害認定日は、初診から1年6カ月経過後ですが、脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6カ月を経過した日以後に、医学的観点からそれ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるときを障害認定日として取り扱うとされています。


障害が複数残る場合があります。

後遺症として残る障害が、肢体の麻痺のケースや言語障害、認知障害などいろいろです。また複数の障害が残る場合もあります。
この場合、どの診断書を使うのが適切なのか、どういう請求にするべきかを検討してから障害年金の申請を進めた方がよい結果になると思います。