血液疾患の障害年金事例と認定基準
再生不良性貧血や白血病などの血液疾患も障害年金の対象です。
血液疾患によるそれほど多いわけではありませんが、藤井法務事務所にもときおりご相談いただきます。
藤井法務事務所で申請した事例をご紹介いたします。
もくじ
再生不良性貧血 障害年金申請成功事例
障害厚生年金2級、2年前の発症、障害認定日決定
障害年金の申請の手続を代行した結果と内容
- 疾患名:再生不良性貧血
- 性別・年齢:男性47歳
- 住所地:北海道
- 障害の状態:貧血、易感染性
- 決定等級:障害厚生年金2級
再生不良性貧血の発症から障害年金申請までの経緯
2年前より立ちくらみ、手足のしびれがとれないため病院を受診した。検査を受けると、貧血と易感染性が認められ、再生不良性貧血と診断される。
その後、グロブリン製剤と免疫抑制剤の治療を2度にわたって受けるものの効果がなく、免疫抑制剤の服用を継続し、通院の都度、輸血をしている。
障害者様から当事務所にご相談いただき障害年金の請求をすることとなり、手続きを代行することとなった。
申請手続きの感想・学んだこと
この事例は、発病から2年で請求した事例でした。請求は初診から1年6月を経過した時点の障害認定日請求で手続きしました。かかっていた病院は一軒であり、医証は診断書一本の請求となりました。
障害厚生年金2級と認定されました。
その他の血液疾患の申請事例
多発性骨髄腫① 障害年金申請事例 障害厚生年金3級血液・造血器疾患の認定基準は?
血液・造血器疾患の障害年金の認定基準は、検査数値や程度の基準が非常に具体的です。しかし、症状の個人差や病態などの違いに配慮して、「検査成績のみをもって障害の程度を認定することなく、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定」することとされています。それだけに、下記の検査基準から少し外れる場合でも認定される可能性があるとみてもよいと思います。
「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 平成28年6月1日改正」を参考に認定基準のポイントを確認します。
令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 |
国年令別表 | 1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの | |
厚年令別表第1 | 3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
血液・造血器疾患について
血液・造血器疾患は、医学研究の進歩によって、診断、治療法が特に著しく変化しつつあります。したがって、血液・造血器疾患の分類は、研究者の見解によって多少異なる分類法がなされています。血液・造血器疾患の主要症状
血液・造血器疾患の主要症状としては、顔面蒼白、易疲労感、動悸、息切れ、頭痛、めまい、知覚異常、出血傾向、骨痛、関節痛等の自覚症状、発熱、黄疸、心雑音、舌の異常、感染、出血斑、リンパ節腫大、血栓等の他覚所見があります。検査成績
検査成績としては、血液一般検査、血液生化学検査、免疫学的検査、鉄代謝検査、骨髄穿刺、血液ガス分析、超音波検査、リンパ節生検、骨髄生検、凝固系検査、染色体分析、遺伝子分析、骨シンチグラム等があります。血液一般検査での検査項目及び異常値
血液一般検査での検査項目及び異常値の一部を示すと次のとおりです。検査項目 | 単位 | 異常値 | |||
軽度 | 中等度 | 高度 | |||
以上~未満 | 以上~未満 | ― | |||
末梢血液 | ヘモグロビン濃度 | g/㎗ | 9~10 | 7~9 | 7未満 |
赤血球数 | 万/μℓ | 300~350 | 200~300 | 200未満 | |
白血球数 | 個/μℓ | 2,000~4,000 | 1,000~2,000 | 1,000未満 | |
顆粒球数 | 個/μℓ | 1,000~2,000 | 500~1,000 | 500未満 | |
リンパ球数 | 個/μℓ | 600~1,000 | 300~600 | 300未満 | |
血小板数 | 万/㎕ | 5~10 | 2~5 | 2未満 | |
骨髄 | 有核細胞 | 万/μℓ | 5~10 | 2~5 | 2未満 |
巨核球数 | /μℓ | 30~50 | 15~30 | 15未満 | |
リンパ球 | % | 20~40 | 40~60 | 60以上 | |
出血時間(Duke法) | 分 | 6~8 | 8~10 | 10以上 | |
APTT(基準値) | 秒 | 基準値の1.5倍~2倍 | 基準値の2倍~3倍 | 基準値の3倍以上 |
検査の評価
個別の各疾患に用いる検査法は、それぞれ異なっており、さらに、前記、「血液一般検査での検査項目及び異常値」に示した検査項目の他にも免疫学的検査を中心にした様々な特殊検査があり、診断、治療法は日々進歩しています。さらに、血液・造血器疾患の病態は、各疾患による差異に加え、個人差も大きく現れ、病態も様々です。したがって、検査成績のみをもって障害の程度を認定することなく、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定されています。一般状態区分
血液・造血器疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりです。一般状態区分表
区分 | 一般状態 |
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり 肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、 日中の50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、 日中の50%以上は就床しており、 自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
各等級に相当すると認められるものの一部例示
難治性貧血群(再生不良性貧血、溶血性貧血等)
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | A表Ⅰ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、かつ、B表Ⅰ欄に掲げる1から4までのうち、 3つ以上に該当するもの(ただし、溶血性貧血の場合は、 A表Ⅰ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、 B表Ⅰ欄の1に該当するもの)で、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 | A表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、かつ、B表Ⅱ欄に掲げる1から4までのうち、 3つ以上に該当するもの(ただし、溶血性貧血の場合は、A表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅱ欄の1に該当するもの)で、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
3級 | A表Ⅲ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、かつ、B表Ⅲ欄に掲げる1から4までのうち、 3つ以上に該当するもの (ただし、溶血性貧血の場合は、A表Ⅲ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅲ欄の1に該当するもの)で、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
区分 | 臨床所見 |
Ⅰ | 1 治療により貧血改善はやや認められるが、なお高度の貧血、出血傾向、易感染症を示すもの 2 輸血をひんぱんに必要とするもの |
Ⅱ | 1 治療により貧血改善はやや認められるが、なお中度の貧血、出血傾向、易感染症を示すもの 2 輸血を時々必要とするもの |
Ⅲ | 1 治療により貧血改善は少し認められるが、なお軽度の貧血、出血傾向、易感染症を示すもの 2 輸血を必要に応じて行うもの |
区分 | 検査所見 |
Ⅰ | 1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの (1) へモグロビン濃度が7.0 g/㎗未満のもの (2) 赤血球数が200万/μℓ未満のもの 2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの (1) 白血球数が1,000/μℓ未満のもの (2) 顆粒球数が500/μℓ未満のもの 3 末梢血液中の血小板数が2万/μℓ未満のもの 4 骨髄像で、次のいずれかに該当するもの (1) 有核細胞が2万/μℓ未満のもの (2) 巨核球数が15/μℓ未満のもの (3) リンパ球が60%以上のもの (4) 赤芽球が5%未満のもの |
Ⅱ | 1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの (1) へモグロピン濃度が7.0 g/㎗以上9.0 g/㎗未満のもの (2) 赤血球数が200万/μℓ以上300万/μℓ未満のもの 2 血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの (1) 白血球数が1,000/μℓ以上2,000/μℓ未満のもの (2) 顆粒球数が500/μℓ以上1,000/μℓ未満のもの 3 末梢血液中の血小板数が2万/μℓ以上5万/μℓ未満のもの 4 骨髄像で、次のいずれかに該当するもの (1) 有核細胞が2万/μℓ以上5万/μℓ未満のもの (2) 巨核球数が15/μℓ以上30/μℓ未満のもの (3) リンパ球が40%以上60%未満のもの(4) 赤芽球が5%以上10%未満のもの |
Ⅲ | 1 末梢血液中の赤血球像で、 次のいずれかに該当するもの (1) へモグロビン濃度が9.0 g/㎗以上10.0/㎗未満のもの (2) 赤血球数が300万/μℓ以上350万/μℓ未満のもの 2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの (1) 白血球数が2,000/μℓ以上4,000/μℓ未満のもの (2) 顆粒球数が1,000/μℓ以上2,000/μℓ未満のもの 3 末梢血液中の血小板数が5万/μℓ以上10万/μℓ未満のもの 4 骨髄像で、次のいずれかに該当するもの (1) 有核細胞が5万/μℓ以上10万/μℓ未満のもの (2) 巨核球数が30/μℓ以上50/μℓ未満のもの (3) リンパ球が20%以上40%未満のもの (4) 赤芽球が10%以上15%未満のもの |
出血傾向群(血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症等)
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | A表Ⅰ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅰ欄に掲げるうち、 いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 | A表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
3級 | A表Ⅲ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅲ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
区分 | 臨床所見 |
Ⅰ | 1 高度の出血傾向又は関節症状のあるもの 2 凝固因子製剤をひんぱんに輸注しているもの |
Ⅱ | 1 中度の出血傾向又は関節症状のあるもの 2 凝固因子製剤を時々輸注しているもの |
Ⅲ | 1 軽度の出血傾向又は関節症状のあるもの 2 凝固因子製剤を必要に応じ輪注しているもの |
区分 | 検査所見 |
Ⅰ | 1 出血時間(デューク法)が10分以上のもの 2 APTTが基準値の3倍以上のもの 3 血小板数が2万/μℓ未満のもの |
Ⅱ | 1 出血時間(デューク法)が8分以上10分未満のもの 2 APTTが基準値の2倍以上3倍未満のもの 3 血小板数が2万/μℓ以上5万/μℓ未満のもの |
Ⅲ | 1 出血時間(デューク法)が6分以上8分未満のもの 2 APTTが基準値の1.5倍以上2倍未満のもの 3 血小板数が5万/μℓ以上10万/μℓ未満のもの |
造血器腫瘍群(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等)
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | A表Ⅰ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅰ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 | A表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
3級 | A表Ⅲ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅲ欄に提げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
区分 | 臨床所見 |
Ⅰ | 1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染症、肝脾腫等の著しいもの 2 輸血をひんぱんに必要とするもの 3 急性転化の症状を示すもの |
Ⅱ | 1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染症、肝脾腫等のあるもの 2 輸血を時々必要とするもの 3 容易に治療に反応せず、増悪をきたしやすいもの |
Ⅲ | 治療に反応するが、肝脾腫を示しやすいもの |
区分 | 検査所見 |
Ⅰ | 1 病的細胞が出現しているもの 2 末梢血液中の赤血球数が200万/μℓ未満のもの 3 末梢血液中の血小板数が2万/μℓ未満のもの 4 末梢血液中の正常顆粒球数が500/μℓ未満のもの 5 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μℓ未満のもの 6 C反応性タンパク(CRP)の陽性のもの 7 乳酸脱水酵素(LDH)の上昇を示すもの |
Ⅱ | 1 白血球数が正常化し難いもの 2 末梢血液中の赤血球数が200万/μℓ以上300万/μℓ未満のもの 3 末梢血液中の血小板数が2万/μℓ以上5万/μℓ未満のもの 4 末梢血液中の正常顆粒球数が500/μℓ以上1,000/μℓ未満のもの 5 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μℓ以上600/μℓ未満のもの |
Ⅲ | 白血球が増加しているもの |
血液・造血器疾患による障害の程度の判定
検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、血液・造血器疾患による障害の程度の判定に当たっては、最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて行うものとされています。急性転化
急性転化では、その発症の頻度、寛解に至るまでの経過を参考にして認定されます。障害の認定
血液・造血器疾患は、一般検査、特殊検査の検査成績等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把提して、総合的に認定されます。血液疾患の障害年金申請のポイント
病歴就労状況等申立書も重要
診断書の記載内容も重要ですが、病歴就労状況申立書もまた重要です。請求される方の日常生活について、医師がすべてを知っているとは限らないことから診断書に反映しているとはいえず、自分で主張することも大切です。病歴就労状況等申立書は、年金申請する方ご自身のことを自分で主張できる唯一の書類です。