人工関節など下肢障害による障害年金と認定基準

変形性股関節症や変形性膝関節症などにより人工関節を入れた場合や事故などによる怪我など下肢の障害事例は、非常に多くご相談を受けます。

もくじ

下肢障害の認定基準は?


認定基準

 令別表障害の程度障害の状態
国年令別表1級両下肢の機能に著しい障害を有するもの (以下 「両下肢の用を全く廃したもの」という。)
両下肢を足関節以上で欠くもの
2級両下肢のすべての指を欠くもの (以下 「両下肢の10趾を中足趾節関節以上で欠くもの」という。)
一下肢の機能に著しい障害を有するもの (以下 「一下肢の用を全く廃したもの」という。)
一下肢を足関節以上で欠くもの
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
厚年令別表第13級一下肢の3大関節のうち、 2関節の用を廃したもの
長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの
両下肢の10趾の用を廃したもの
身体の機能に、 労働が著しい制限を受けるか、 又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
別表第2障害手当金一下肢の3大関節のうち、 1関節に著しい機能障害を残すもの
一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
長管状骨に著しい転位変形を残すもの
一下肢の第1趾又は他の4趾以上を失ったもの (以下「一下肢の第1趾又は他の4趾を中足趾節関節以上で欠くもの」という。)
一下肢の5趾の用を廃したもの
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

認定要領

下肢の障害は、機能障害欠損障害変形障害及び短縮障害に区分する。


機能障害

「両下肢の機能に著しい障害を有するもの」

「両下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両下肢の用を全く廃したもの」とは、両下肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいいます。

(ア)不良肢位で強直しているもの

(イ)関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ)筋力が著減又は消失しているもの

ただし、両下肢それぞれの膝関節のみが100度屈曲位の強直である場合のように、両下肢の3大関節中単にそれぞれ1関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その両下肢を歩行時に使用することができない場合には、「両下肢の用を全く廃したもの」と認定されます。

なお、 認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定されます。


「一下肢の機能に著しい障害を有するもの」

「一下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち 「一下肢の用を全く廃したもの」とは、一下肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいいます。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ)関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ)筋力が著減又は消失しているもの

ただし、膝関節のみが100度屈曲位の強直である場合のように単に1 関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その下肢を歩行時に使用することができない場合には、「一下肢の用を全く廃したもの」と認定されます。


「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」

「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、両下肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動城の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの)をいいます。
なお、認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、 その動作を考慮して総合的に認定されます。


「関節の用を廃したもの」

「関節の用を廃したもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時(起床より就寝まで)固定装具を必要とする程度の動揺関節)をいいます。


「関節に著しい機能障害を残すもの」

「関節に著しい機能障害を残すもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼)をいいます。

(注)関節に著しい機能障害がない場合であっても、 関節に機能障害を残すもの(「関節の他動可動城が健側の他動可動域の5分の4以下に制限されたもの」 又は 「これと同程度の障害を残すもの (例えば、固定装具を必要としない程度の動揺関節、習慣性脱臼)」をいう。)に該当する場合は、第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の12号)」にも留意すること。


「足趾の用を廃したもの」

「足趾の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

(ア) 第1趾は、末節骨の2分の1以上、その他の4趾は遠位趾節間関節(DIP)以上で欠くもの

(イ) 中足趾節関節(MP)又は近位趾節間関節(PIP)(第1趾にあっては、趾節間関節(IP))に著しい運動障害(他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの)を残すもの

なお、両下肢に障害がある場合の認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定されます。


「身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」

身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一下肢の3大関節中1関節が不良肢位で強直しているもの)又は両下肢に機能障害を残すもの (例えば、両下肢の3大関節中それぞれ1関節の筋力が半減しているもの) をいいます。

なお、両下肢に障害がある場合の認定に当たっては、一下般のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定されます。


人工骨頭・人工関節の取り扱い

人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものについては、次により取り扱われます。

(ア)  一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。
ただし、そう入置換してもなお、一下肢については「一下肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両下肢については「両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定する。

(イ) 障害の程度を認定する時期は、人工骨頭又は人工関節をそう入置換した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。


「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」

「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一下肢に機能障害を残すもの(例えば、一下肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの)をいいます。


日常生活動作

日常生活における動作は、おおむね次のとおりです。
(ア)片足で立つ

(イ)歩く(屋内)

(ウ)歩く(屋外)

(エ)立ち上がる

(オ) 階段を上る

(カ)階段を下りる


欠損障害

「足関節以上で欠くもの」

「足関節以上で欠くもの」とは、ショパール関節以上で欠くものをいいます。


「趾を欠くもの」

「趾を欠くもの」とは、中足趾節関節(MP)から欠くものをいいます。



なお、いずれも切断又は離断による障害の程度を認定する時期は、原則として、切断又は離断をした日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とするとされています。

ただし、障害手当金を支給すべきときは、創面が治ゆした日とするとされています。


変形障害

「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」

「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限る。)

(ア) 大腿骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

(イ) 脛骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

なお、 いずれも運動機能に著しい障害はないが、大腿骨又は脛骨に偽関節を残すもの(「一下肢に偽関節を残すもの」という。)は、障害手当金(第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の8号)」)に相当するものとして認定されます。


「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」

「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

(ア)  大腿骨に変形を残すもの

(イ)  脛骨に変形を残すもの(腓骨のみに変形を残すものについても、その程度が著しい場合はこれに該当する)

ただし、変形とは外部から観察できる程度(15度以上わん曲して不正ゆ合したもの)以上のものをいい、長管状骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえその部位に肥厚が生じたとしても、長管状骨の変形としては取り扱われません。


短縮障害
下肢長の測定は、 上前腸骨棘と脛骨内果尖端を結ぶ直線距離の計測によります。


一下肢が健側の長さの4分の1以上短縮した場合

一下肢が健側の長さの4分の1以上短縮した場合は、「一下肢の用を全く廃したもの」に該当するものとして認定されます。


一下肢が健側に比して10センチメートル以上又は健側の長さの10分の1以上短縮した場合

一下肢が健側に比して10センチメートル以上又は健側の長さの10分の1以上短縮した場合は、「一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」に該当するものとして認定されます。


関節可動域の測定方法、関節の運動及び関節可動域等の評価
測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」によります。


関節の運動に関する評価

関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については参考とされます。

なお、 各関節の主要な運動は次のとおりです。
部位主要な運動
股関節屈曲・伸展
膝関節屈曲・伸展
足関節背屈・底屈
足指屈曲・伸展

関節可動域の評価

関節可動域の評価は、原則として、健側の関節可動域と比較して患側の障害の程度を評価されます。

ただし、両側に障害を有する場合には、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域を参考とします。


関節の評価

各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮した上で評価されます。

(ア)筋力

(イ)巧緻性

(ウ)速さ

(エ)耐久性

なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から下肢の障害を総合的に認定されます。


変形性股関節症 障害年金申請事例 障害厚生年金3級

以下、藤井法務事務所 障害年金研究室で申請した事例をご紹介します。

人工関節 障害厚生年金3級(障害認定日決定)


手続を代行した結果・概要
  • 疾患名:変形性股関節症
  • 性別・年齢:女性 54歳
  • 住所地:北海道札幌市
  • 障害の状態:右人工関節置換
  • 決定等級:障害厚生年金3級

変形性股関節症の発症から障害年金申請までの経緯
6年前より、腰痛を覚えるようになり、マッサージ等受けていたが、4年前から腰のほか膝や股関節にも痛みが現れるようになったため整形外科を受診した。

診察の結果、右変形性股関節症、左変形性膝関節症など複数の病気があることがわかった。手術をすすめられたが、術後の生活が不安で決心できず、他の整形外科を何件か受診した。

何軒か受診したうちの一軒の病院で、実際に手術を受けた患者さんの体験談を聞くことができ、また、医師からも手術と術後について詳しく話を聞くことができ、安心感を持てたことから右股間節の人工関節置換術を受けることとした。

以後、股関節の状態はよくなったものの、左ひざや腰など痛みを抱えている部分があり継続して内服治療を受けている。


申請手続き・学んだこと
障害年金の申請については、ご本人様から、当事務所にご依頼いただきました。

初診が4年前ということでしたので、受診状況等証明書については、特に問題なくスムーズに入手することができました。

診断書は、手術を行った病院で取得し、病歴・就労状況等申立書を詳細に記載して提出しました。

障害厚生年金3級と決定されました。




その他の障害年金申請事例

両側特発性大腿骨骨頭壊死 障害年金申請事例ー障害認定日決定、3級