肝硬変など肝臓病の障害年金と認定基準

肝硬変や肝がんは、障害年金の対象です。

B型肝炎などの肝炎から肝硬変や肝がんに進行された事例のご相談をよくいただきます。

この場合、初診から10年以上経過して障害年金の申請となるため、初診のカルテがないということが多く、初診の証明が問題となります。

肝臓も他の内臓疾患と同じで、障害年金の申請をすすめていくうえでは初診日の特定が最大の問題です。

 

藤井法務事務所で申請した事例をご紹介します。

 

肝硬変 障害年金申請事例1

障害厚生年金3級、肝硬変、食道動脈瘤

手続を代行した結果・概要
  • 疾患名:肝硬変
  • 性別・年齢:男性61歳
  • 住所地:北海道
  • 障害の状態:肝硬変、食道静脈瘤、脾腫、全身倦怠感、食欲不振、皮膚そう痒感、有痛性筋痙攣
  • 決定等級障害厚生年金3級
肝機能異常の発症から障害年金申請までの経緯
16年前、45歳の頃に会社の健康診断で肝機能異常を指摘された。

血液検査の結果、B型肝炎と診断されたものの、軽度であり特に継続した治療は必要なく体調管理を指示され受診を終了した。
それから、6年後、腹痛があり、近くの内科を受診したところ、肝機能に異常があるとのことで大きな病院を紹介された。検査の結果、肝硬変に進行していたことがわかり、服薬を続けながら定期的に受診し経過観察を行うこととなった。

さらに、その5年後に黄疸で入院した後にCT検査を受けたところ肝細胞癌と食道動脈瘤が見つかり、手術を受ける。

その後も再び食道動脈瘤が発見され、手術を受けるが、肝細胞癌は落ち着いており、治療を継続している。

 
請求手続き・学んだこと
初診から16年を経て、障害年金の申請となった事例でしたが、カルテが残っており受診状況等証明書の取得ができました。

診断書は、現在の主治医に記載していただき請求となりました。

障害厚生年金3級と決定されました。

 

その他の肝疾患申請事例

肝細胞癌 障害年金申請事例2-事後重症、2級

肝硬変・肝細胞癌 障害年金申請事例3-障害認定日決定、2級、肝移植により支給停止

肝硬変・肝臓癌 障害年金申請事例4-事後重症、2級

 

肝疾患の障害認定基準は?

「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 平成29年9月1日改正」を参考に認定基準のポイントを確認します。

肝疾患による障害については、 次のとおりです。
令別表障害の程度障害の状態
国年令別表1級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、 日常生活が著しい制限を受けるか、 又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
厚年令別表13級身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
肝疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、 長期にわたる安静を必要とする病状が、 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定されています。

 

障害認定の対象

肝疾患による障害の認定の対象は、慢性かつびまん性の肝疾患の結果生じた肝硬変症及びそれに付随する病態(食道・胃などの静脈瘤特発性細菌性腹膜炎肝がんを含む。)です。

肝硬変では、一般に肝は萎縮し肝全体が高度の線維化のため硬化してくるとされます。

肝硬変で最も多いものは、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスによるウイルス性肝硬変であり、その他自已免疫性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎による肝硬変、アルコール性肝硬変、胆汁うっ滞型肝硬変、代謝性肝硬変(ウィルソン病、ヘモクロマトーシス)等があります。

 

肝疾患の主要症状

肝疾患の主要症状としては、易疲労感、全身倦怠感、腹部膨満感、発熱、食欲不振、悪心、嘔吐、皮膚そう痒感、吐血、下血、有痛性筋痙攣等の自覚症状、肝萎縮、脾腫大、浮腫、腹水、黄疸、腹壁静脈怒張、食道・胃静脈瘤、肝性脳症、出血傾向等の他覚所見があります。

 

肝疾患の検査

検査としては、まず、血球算定検査、血液生化学検査が行われますが、さらに、肝炎ウイルス検査、血液凝固系検査、免疫学的検査、超音波検査、CT・MR I検査、腹腔鏡検査、肝生検、上部消化管内視鏡検査、肝血管造影等が行われています。

 

重症度判定の検査項目・臨床所見・異常値

肝疾患での重症度判定の検査項目及び臨床所見並びに異常値の一部を示すと次のとおりです。
検査項目/臨床所見基準値中等度の異常高度異常
血清総ビリルビン
(mg/dl)
0.3~1.22.0以上3.0以下3.0超
 血清アルブミン
(g/dl)
(BCG法)
 4.2~5.1 3.0以上3.5以下 3.0未満
 血小板数
(万/μl)
 13~35  5以上10未満 5未満
 プロトロンビン
時間(PT)(%)
 70超~130 40以上70以下 40未満
 腹水 ― 腹水あり 離治性腹水あり
 脳症(表1) Ⅰ度 Ⅱ度以上
表1 昏睡度分類
昏睡度精神症状参考事項
睡眠一覚醒リズムに逆転。
多幸気分ときに抑うつ状態。
だらしなく、気にとめない態度。
あとで振り返ってみて判定できる。
指南力(時、場所)障害、
物をとり違える(confusioln)
異常行動
(例:お金をまく、化粧品をゴミ箱に捨てるなど)
ときに傾眠状態(普通のよびかけで開眼し会話が出来る)
無礼な言動があったりするが、他人の指示には従う態度を見せる。
興奮状態がない。
尿便失禁がない。
羽ばたき振戦あり。
しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度をみせる。
嗜眠状態 (ほとんど眠っている)。
外的刺激で開限しうるが、他人の指示には従わない、または従えない(簡単な命令には応じえる)。
羽ばたき振戦あり。
(患者の協力がえられる場合)
指南力は高度に障害。
昏眠 (完全な意識の消失)。
痛み刺激に反応する。
刺激に対して、払いのける動作、顔をしかめるなどがみられる。
深昏睡
痛み刺激にもまったく反応しない。
 

一般状態区分

肝疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりです。

一般状態区分表
区分一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、 日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの
 

各等級に相当すると認められるものの一部例示


障害の程度障害の状態
1級前記「重症度判定の検査項目・臨床所見・異常値」の検査成績及び臨床所見のうち高度異常を3つ以上示すもの又は高度異常を2つ及び中等度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの
2級前記「重症度判定の検査項目・臨床所見・異常値」の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を3つ以上示すもので、かつ、 一般状態区分表のエ又はウに該当するもの
3級前記「重症度判定の検査項目・臨床所見・異常値」の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの
なお、障害の程度の判定に当たっては、前記「重症度判定の検査項目・臨床所見・異常値」の検査成績及び臨床所見によるほか、他覚所見、他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定されます。

 

検査成績の取り扱い

検査成績は、その性質上変動しやすいので、肝疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとされています。

 

肝硬変の認定

肝硬変は、その発症原因によって、病状、進行状況を異にするので、各疾患固有の病態に合わせて認定されます。アルコール性肝硬変については、継続して必要な治療を行っていること及び検査日より前に180日以上アルコールを摂取していないことについて、確認のできた者に限り、認定を行うものとされています。

 

慢性肝炎の認定

慢性肝炎は、原則として認定の対象としませんが、「各等級に相当すると認められるものの一部例示」に掲げる障害の状態に相当するものは認定の対象とします。

 

静脈瘤の認定

食道・胃などの静脈瘤については、吐血・下血の既往、治療歴の有無及びその頻度、治療効果を参考とし、前記「重症度判定の検査項目・臨床所見・異常値に掲げる検査項目及び臨床所見の異常に加えて、総合的に認定します。特発性細菌性腹膜炎についても、同様とされています。

 

肝がんの認定

肝がんについては、前記「重症度判定の検査項目・臨床所見・異常値」に掲げる検査項目及び臨床所見の異常に加えて、肝がんによる障害を考慮し、本節及び「第16節/悪性新生物による障害」の認定要領により認定されます。ただし、前記「重症度判定の検査項目・臨床所見・異常値」に掲げる検査項目及び臨床所見の異常がない場合は、第16節の認定要領により認定されます。

 

肝臓移植の取り扱い

ア  肝臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定されます。

イ  障害年金を支給されている者が肝臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とするとされています。

 

 

肝硬変などの肝臓病の障害年金申請ポイント

初診日の特定ができれば手続きは進む

肝硬変などの肝臓病も他の内臓疾患と同じく、初診から長い時間がたっていることがよくあります。初診日の特定が課題となることも多いです。個々に状況が違いますから一般論でこうしたらいいということは言えませんが、障害年金の専門家の意見を聴いてみるのも一つの方法です。

 

認定基準が明確

肝臓の場合、認定基準は、かなり具体的です。ご自分の状態を見て該当しそうだと思ったときは障害年金の申請をおすすめします。

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